先日行われた、NHK上方漫才コンテストでゆりやんレトリィバァが見事優勝を果たしました。
しかし、“漫才”コンテストで漫才でもなければ、コンビでもない“ピン芸人”が勝ち抜いたということで、物議を醸しています。
そこで今回は、その定義や審査基準、歴史などを見ながら今回の審査は正しかったのか、何を意味しているのか等々、考察しまとめていきたいと思います!
[目次]
NHK上方漫才コンテストの定義と歴史
若手漫才師の賞レースにも色々なものがあります。代表的なものとしては、「M-1グランプリ(THE MANZAI)」がありますし、「MBS漫才アワード」、「ABCお笑いグランプリ」、そして「NHK新人演芸大賞」等々、たくさんありますよね。
その中でも「NHK上方漫才コンテスト」は、上方(関西を表す)の芸人にとってステータスとなっていると言えます。
『NHK上方漫才コンテスト』の定義は、コンビ結成10年以内の若手芸人を対象とし、1971年に始まり今年まで45年以上続く非常に歴史の長い大会です。
過去には、ますだおかだやフットボールアワー、笑い飯などのM-1でも優勝した、中堅で漫才に定評のある芸人を輩出しています。あのダウンタウンも過去に優秀賞を受賞しています。
最近でも銀シャリ、和牛、スーパーマラドーナの昨年M-1ファイナルの残った3組がすべて最優秀賞を受賞するなど、まさしくその年に一番面白い漫才師を選ぶコンテストのように見えますよね。
しかし、今回ゆりやんレトリィバァはピン芸人であるにも関わらずなぜこの賞を受賞するに至ったのでしょうか?
さらに詳しく見てまいりましょう!
コンビにピン芸人も?歴代受賞者から見る審査基準の変化
出典:https://www.shikoku-np.co.jp/national/culture_entertainment/print.aspx?id=20140314000700
名前が「漫才コンテスト」であるように、上方で一番面白い若手漫才師を選ぶ大会であった『NHK上方漫才コンテスト』。いつから審査基準が変わったのでしょうか。
歴代の受賞者を見てみることで、何か見えてくるかもしれませんよね。
開催当初から見てみると余りにも多いため、2000年以降の歴代受賞者を見てみましょう!
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2000年 キングコング レギュラー りあるキッズ
2001年 ランディーズ フットボールアワー ビッキーズ
2002年 フットボールアワー オジンオズボーン ビッキーズ
2003年 ビッキーズ チュートリアル 友近
2004年 笑い飯 麒麟 ザ・プラン9
2005年 レギュラー 千鳥 つばさ・きよし
2006年 チョップリン アジアン なすなかにし
2007年 プラスマイナス アジアン 千鳥
2008年 とろサーモン アジアン モンスターエンジン
2009年 ギャロップ 銀シャリ スーパーマラドーナ
2010年 銀シャリ モンスターエンジン
2011年 スーパーマラドーナ さらば青春の光
2012年 かまいたち 学天即
2013年 ウーマンラッシュアワー 和牛
2014年 和牛 タナからイケダ
2015年 アキナ インディアンス
2016年 ミキ トット
2017年 ゆりやんレトリィバァ プリマ旦那
※赤文字は最優秀賞受賞者、黒文字は優秀賞受賞者
いやぁ~そうそうたるメンツですよね。
しかし、これを見てみても、友近が優秀賞を受賞してはいますが今回のゆりやんレトリィバァの最優秀賞の受賞は批判を受けるのも納得がいくほど、突然なものに見えてしまいますね。
今年は、ZAZYという男性のピン芸人も本選に残ってはいましたが、歴代受賞者を見ても友近以外はコンビの本格派漫才師がほとんどで、“漫才コンテスト”という名にふさわしい大会であったと言えると思います。
友近自体もゆりやんレトリィバァとは違って一人で言わば漫才のようなものをする芸風ですしね。やはり、これを見てもゆりやんレトリィバァの受賞は違和感が残ると言わざるを得ません。
主催者や審査員が語る昔と今の違い
では、主催者や審査員はどのような意図を持っていたのでしょうか?見てみましょう。
主催者の考え
今回のゆりやんレトリィバァの優勝について佐藤陽一NHKプロデューサーは、今回の意図について
漫才イコールお笑いのコンテストというところで、ピン芸人もコントも含め、一番面白く、将来性もあると見込んだ6人に(本選に)来ていただきました。
と言い、お笑いの多様化によって漫才だけでなくフリップ芸やコントなどもしゃべくりに劣らず面白く、紹介していきたいという考えを示しました。
さらに、佐藤氏は
漫才と入っている番組の名称までも変えようとしたけど、番組の歴史を考えて今の空気だけで変えるのはまずいのではないかと考えました。お笑いコンテストの中身については、応募する芸人の違いによって変わっていけばよいのではないか
と語っています。
はっきり言って、言ってることがめちゃくちゃですよね。歴史を考えるのであれば、漫才コンテストとしての姿にこだわるべきだし、お笑いの多様性を重要視したいのであれば番組の名前自体も変えるべきだと思います。
非常に中途半端な印象を受けますね。このような姿勢が批判の声を浴びている一つの理由であると思います。
先輩、審査員の考え
出典:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170305-00000078-dal-ent
先輩であり今回決勝の審査員も務めていたハイヒールのリンゴさんは、ゆりやんレトリィバァの優勝について、
昔は名の通り漫才コンテストだったが、今はコント形式の芸人も多いため、コントを育てるという意味でも“漫才”という言葉を外すべきではないか
コンテストの名前と実態が合っていないというのも、お笑い界全体を底上げしているときのうれしい悩みやと思う
といった趣旨の発言をしています。
お笑い界全体を考える非常に冷静で肯定的な意見ですよね。
リンゴさんの発言からも見える今回のゆりやんレトリィバァの優勝が意味することは、お笑いの多様化だと思います。
漫才が主流であった昔と違い、少しずつコントやピン芸人の活躍の場が増え始め、その流れに乗って漫才グランプリの姿が変わったのでしょう。
しかし、私自身は歴史あるNHK上方漫才コンテストでは、“漫才師”であるコンビに絞って出場させるべきではないか、と思います。
お笑いの多様性が重要だとは言いますが、この大会でなくてもコントやピン芸人の賞レースは存在しますしね。
もし、“漫才グランプリ”に芸人全ての参加や受賞を許すのであれば、それこそ名前を“お笑いグランプリ”へと変えるべきではないのでしょうか?
お笑いの未来のためにも、多様化しているからと言って伝統を崩さずに、漫才の大会はしっかりとした漫才師に、コントの大会は面白いコント師に受賞させることで、一つ一つがさらに進化していくのではないかと思います。
漫才コンテストの審査基準や定義のまとめ
ここまで、ゆりやんレトリィバァがNHK上方漫才コンテストで優勝したことについて、定義や歴史、審査基準の変化を見ながら考察してきました!
結局、漫才が主流であった昔と比べ、お笑い界の多様化が進んでいるという事がその理由であると言えると結論付けました。
今回の批判は、そのようなお笑い界の進化の中で起こった出来事であり、正しかったとは言い切れないかもしれませんが、今後芸人がもっと輝けるようさらに良い方向へと向かっていく過程であると考えたいですね。